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スターフルーツ

文章

「わあ!可愛い!」
コース料理の最後に出されたデザート、彼女はそれを見てはしゃぐ。さくらんぼとオレンジと黄色い星形の果物が添えられている。あまりにも可愛い可愛いと言う彼女に店員が話しかける。
スターフルーツ、可愛いですよね」
「これスターフルーツって言うんですか?」
見たままの名前じゃないか、と思った。でも彼女はその名前も気に入ったらしい。また可愛いと言った。

このレストランでコース料理を注文したのは初めてだ。平日の夜だからか客は他にいなくて、店員がすぐに皿を下げて、次の料理が運ばれてくる。彼女は美味しいと言ってすぐに食べてしまうから、僕のほうが彼女を待たせることになる。
彼女とは大学のサークルで知り合った。もう付き合って長い。社会人になっても何も変わらない。あいつはどうしてるだとか同じような話をしている。どこにいるとか誰といるだとかそんなことくらいだ。2人で一緒にいる時間は、学生時代の延長線上なのかもしれない。
前菜、サラダ、主菜、パスタ…コースが進むにつれて、お腹がいっぱいになったわけでもないのに、箸が進まなくなってくる。でも僕と違って彼女の食べるペースは変わらない。
彼女は変わっていない。むしろ綺麗になった。

いつもと同じように、彼女がトイレに行っている間に会計を済ませて店を出る。
スターフルーツは見た目とはうらはらに、ちょっとだけ酸っぱい、味の薄い果物だった。